(三重県三重郡桜村と智積村に其々存在したと伝承される「元標」についての一考察) |
2006年9月13日更新 2006年6月18日掲載 |
桜村の元標(げんぴょう)の記念碑 右の写真は、明治時代から昭和20年代まで存在したという「櫻村の元標」を模して、昭和63年(1988)桜町一色の故大矢実氏が建立されました。 [所在地] ●旧湯の山街道沿い、桜町一色の地蔵堂の階段下 (四日市市桜町519付近) [刻字] ●碑表:元標 元在武佐学校 ●右側:四日市元標 二里二十町五間二尺九寸 ●碑裏:再建 昭和六十三年四月 大矢 実 ●左側:距津駅元標 十一里十二町十間五尺九寸 [石柱の寸法] ●高さ:157cm ●幅:18cm ●奥行き:14cm |
「桜村の元標の記念碑(2005年4月撮影) |
目 次 |
はじめに |
1、櫻村と智積村の元標(里程標)の設置場所 |
2.櫻村・智積村の地図作成に伴う「測点」 |
3.近代道路整備・・・「里程元標」と「里程標」 |
4.三重郡内の「里程標」 |
5.まとめ |
はじめに |
「桜地区内に在った二基の 桜町一色の故大矢実氏(元会員)は、郷土の歴史的遺物の風化を惜しんで、明治時代の小学校「武佐(むさ)学校」の前に在った「桜村の元標」の再建を決意しました。 御自身は元標の記憶が曖昧だったので、近所の古老の話を聞いたり、当会の先輩会員に相談したり、『櫻村地誌』を調べたりと一生懸命でした。 出来上がった「石柱」の設置場所については、元標が建っていた元の場所には設置できなかったので、地元の人々と相談した上で、邪魔にならなくて人目に付くこの場所へ、昭和63年(1988)10月に建立してやっと念願を果たしたそうです。(この時、元標の形状等に違った意見を持ち、再建に反対する人々もいたそうです) それから16年後、後輩である私たち郷土史会員は、改めて“元標”について様々な文献を調べて討議を重ね、その結果下記のように結論を出しました。
本稿では、当地の『明治十七年調伊勢国三重郡櫻村地誌草稿』などの史料と、明治時代の「地誌編輯に関する法令」や「道路元標や里程標に関する法令」等を慎重に調査研究して、当地の元標は実際にはどの様なものであったかを考察します。 |
1.櫻村と智積村の元標(基点)の設置場所 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1)当地域の変遷
(3)櫻村の元標
(2)智積村の元標
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2.櫻村・智積村の地図作成に伴う「測点」 | ||||||||||||||||||||||
明治新政府は、明治元年(1868年)12月、地図と地誌の作成を府県に命じ、測量方法を細かく指示し、「測点」の設置を指導しました。
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3.近代道路整備・・・「里程元標」と「里程標」 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
明治維新政府は、前項でみたように、各県庁経由で郡内各村の地誌と、正確な測量に基づいた地図を作成させました。 また、ほぼ同時期に、道路整備、官営鉄道敷設、通信・郵便制、税制改革(地租改正)等の事業政策を実施する一方で、軍事体制を強化していきます。各々の政府事業は、互いに幾重にもリンクし合っており、その根底には日本地図と里程距離が必要不可欠であったことが窺われます。 (1)国の動脈たる道路整備 明治〜大正〜昭和時代にかけて、日本の近代化に伴い道路も見直し整備され、実情に合わなくなった道路の距離を示す里程標から、道路の基点を示す標石に代わり、やがて近代的な道路システムへと変遷します。 ここでは、明治時代の「元標および里程標」→大正時代の「道路元標」→昭和時代の「新道路法」の流れから、当地の「元標(?)と 里程標」について考えます。
ひとこと
(3)徴税システムの改正(地籍地図の必要性)
(4)物資を迅速に大量輸送する官営鉄道網敷設(正確な里程距離の必要性)
(5)軍隊の近代化(藩兵を解散し、兵権の中央集権化)
ひとこと
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4.三重郡内の「里程標」 | ||||||||||||||||||
三重郡内の現存する「里程標」を調査
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5.まとめ | ||||||||
1.明治政府の道路整備に伴う「里程標柱の設置」
2.当地で「里程標」を「元標」と呼称した理由
3.当地の里程標(元標)は「石製」だったか?
4.木製の里程標の耐用年数
5.結論
(文責・永瀧 洋子) |
参考史料:『明治十七年調べ伊勢国三重郡桜村地誌草稿』、『明治十七年調べ伊勢国三重郡智積村地誌』、『伊勢国三重郡桜村地誌附属之図』明治18年7月製作)、『法令全集』、『三重県史』、『四日市市史』、『菰野古碑 その風土』(佐々木一著) 2002年5月13日掲載後一時中断、2006年6月18日新規掲載、2006年9月13日更新 2018年8月更新 |