(つばきぎしじんじゃ の ししまい)
三重県四日市市智積町の椿岸神社の獅子舞は、
1992年(平成4)6月、四日市市指定無形民俗文化財に指定されました。
椿岸神社の獅子舞は、
「椿大神社」(鈴鹿市山本町)を本拠地とする「山本流」に属します。
目 次 | |
1. 椿岸神社秋季大祭と獅子舞奉納 | 6. 椿岸神社宝物の獅子頭 |
2.椿岸神社獅子神御祈祷神事(解説) | 7. 椿岸神社獅子舞保存会の歴代会長 |
3. 椿岸神社獅子舞の用語解説 | 8. 山本流獅子舞について |
4. 獅子舞のルーツとその発達 | 9. 椿大神社 椿宮獅子神御祈祷神事 |
5. 椿岸神社獅子舞の起源・伝承・経緯 |
1.椿岸神社秋季大祭と獅子舞奉納 |
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椿岸神社の獅子舞
椿岸神社秋季大祭と獅子舞奉納
同日の午後2時から、椿岸神社拝殿前でが約2時間半にわたって奉納されます。(次項に詳しく掲載) |
2.椿岸神社獅子神御祈祷神事(解説) |
【祈祷舞の段節】 (用語は、「椿岸神社獅子舞の用語解説」をご参照ください) それぞれ座に着くと、一同再拝二拍手一拝し、神主が猿田彦大神をはじめ、天神地祇八百万の神のご降臨を願う。 この時、笛にて神おろしの曲を奉奏する。 次いで、神主が大祓詞(中臣祓)を笛の調べとともに奏し、その間、「お頭役」、「口取り役」は静座のまま。 大祓詞の奏上が終わると、鼓、太鼓の音とともに、「お頭役」、「口取り役」が立ち上がり、初段の祈祷神事を斎行する。 |
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【1.初段の舞(四方ざし)】
猿田彦大神の神面を頂く「口取り役」が「ささら」を用いて獅子神を操り、天地人四方八方を祓い清める。 |
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【2.起こしの舞】 ひと休みの獅子神に対し、「口取り役」は四方を飛び回ってこれを鼓舞し、今一度眠れる獅子を起こして祓い清めを命じます。 獅子神は座したまま、天地人四方八方に神頭を巡らせ祓い修めます。 このお越こしの舞を修めることで、いよいよ全てが祓い清められ、次の段節へと進みます。 |
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【3.扇の舞】 「口取り役」が「ささら」を「扇」に持ち替え、天下泰平、四海静穏、風雨順時、百穀潤屋の聖武天皇勅願のままに祈願をこめて斎行される祈祷舞です。 祈祷舞は「扇の舞」、「すら舞」、「逆手の舞」、「背追いの舞」、「追いたての舞」、「扇起こしの舞」、「捨て扇の舞」の七曲に区分されています。 その七曲と七神役の七拍子とが一心同体となり、日の丸の扇になぞらえた天照大神の御心との調和が綾なす、神恩感謝の優雅な悦びの舞です。 |
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【4.鳥差しの舞】 鳥差しの舞は、獅子は出ず、「口取り役」の子が、一人で行うもので、山本流の元祖である椿大神社にも伝わっていない椿岸神社独自のものです。 「口取り役」が竿の先に「鳥もち」をつけ、鳥を捕る仕草をして、鳥が五穀を食い荒らさぬよう戒める行事です。
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【5.子獅子の舞】 「後舞役」が別途に用意された小ぶりの獅子頭を用い、「口取り役」の教導によって舞うもので、年少者の身体・精神の健全な育成、教導を目的としています。 舞い終わった後で、子獅子は拝観者の頭を噛みに行くことになっており、喜んで受けて戴くこととされています。 (お獅子に頭を噛んでもらうと、その一年は健康に過ごせる、頭痛持ちが治る、頭の良い子に育つなど縁起が担がれています) |
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【6.御湯立ての祓い(湯の花)】
「口取り役」のにみよって修められる清め祓い、即ち猿田彦大神自ら親しく斎行される祓いです。 御幣、鈴、弓矢、笹の葉を束ねたものを用い、湯(斎の水)に見立てた五色の切麻(切り刻んだ色紙)を天地左右中と振り撒いて祓い清め、最後にその切麻を拝観者に振りかけます。 これを「湯の花」とも称し、これを被る(こうむる)ことは猿田彦大神の神徳を授かることとされ、たいへん喜ばれています。 |
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【7.花の舞】
五色の紙に切目を入れて稲の花に見立てたもの、また五色の切麻を包んだ紙包みを青竹に付け、あたかも大きな稲の如くにしつらえたものを用い、華やいだ舞場にて再び獅子神が舞う。 大竹が大きく揺すられると、五色の稲穂がゆらゆら揺れ、細かく切られた五色の色紙が空中に舞い散り、それに合わせて獅子神も大きく大胆に舞う様子は圧巻です。 |
3.椿岸神社獅子舞の用語解説 | |
お頭役 (おかしらやく) |
胴幕の中で獅子頭を操って舞う「お頭役」は、「天鈿女命(天宇受売命)(あまのうずめのみこと)」の化身と見做(みな)されています。 「お頭役」が担う「獅子神」の動きは非常に激しく、腰を低く屈めて地をのた打ち回るかのような仕草をしたかと思うと、急に天空に向って吠えるような舞いの動きをしながら、同時に「後舞役」の子どもを誘導しなければならずかなり鍛錬が要ります。 (智積町の大人の男性が務めます) |
後舞役 (あとまいやく) |
「後役舞」も、「天鈿女命(天宇受売命)(あまのうずめのみこと)」の化身とされています。 「後役舞」は女神の「天鈿女命(天宇受売命)」を模して、振袖に袴着姿で胴幕内の「お頭役」の後ろに入って舞います。 常に獅子の全体の姿を留意し、特に腹部の形に注意を払い、胴幕を張りすぎたり緩めすぎたりしないよう注意が必要です。 (智積町の男子小学生の2、3、4年生が務めます) |
口取り役 (くちとりやく) |
鳥の兜に天狗の面を着けた「口取り役」は、猿田彦大神(さるたひこおおかみ)の化身とされています。 獅子の先導役となり、「ささら」や「扇」を用いて舞います。 (智積町の男子小学生の高学年5、6年生が務めます) |
ささら | 獅子舞、田楽などに用いる楽器。 竹を一尺(約30cm)ほどに切り、その先を細かく割いて束ねたものを右手に持ち、別に「ささらご」と称する棒にきざみをつけたものを左手に持って、摺り合わせて音を出し拍子をとります。 |
胴幕 (どうまく) |
獅子頭についた布の胴のこと。これに前後二人、「お頭役」と「後舞役」が入って舞います。 「子獅子の舞」の段では、小さい獅子頭と胴幕がついたものを子どもが一人で被って、「口取り役」の先導で舞います。 |
【注】椿岸神社獅子舞では、「お頭役」、「後舞役」、「口取り役」と呼称されていますが、それぞれ神社や地域などによって呼び方は変わります。 | |
4.獅子舞のルーツとその発達 |
獅子舞のルーツとその発達
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5.椿岸神社獅子舞の起源・伝承・経緯 | ||
【起源】
太平洋戦争後の1951年(昭和26)以降の獅子舞の継承について、「椿岸神社獅子舞保存会」の会長の山岸昇様にお聞きしました。
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6.椿岸神社宝物の獅子頭 | ||||||||
1.椿岸神社獅子神 平成19年度(2007)獅子神祈祷神事 10月14日(日)午後2時から斎行 拝殿正面に据えられた宝物・獅子頭(椿岸神社獅子神)です。
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7.椿岸神社獅子舞保存会の歴代会長 | |||
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8.山本流獅子舞について |
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9.椿大神社 椿宮獅子神御祈祷神事 | |
「椿大神社 椿宮獅子神門御祈祷」
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「椿大神社 椿宮獅子神御祈祷神事」 「椿大神社 椿宮獅子神御祈祷神事」・・・椿岸神社境内にて (2003年3月9日撮影) |
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【謝辞】 「椿岸神社獅子舞保存会」の会長・山岸昇様には、大変ご丁寧にご教示いただきました。心から御礼申し上げます。 (文責・写真撮影:永瀧 洋子) |
参考資料:『獅子神御祈祷神事斎行の次第』(椿岸神社獅子舞保存会)。椿岸神社社報『つばきぎし』平成4年5月1日号(椿岸神社社務所発行)。『四日市市史第四・五巻』(四日市市)。『三重の古文化通巻109号』(三重郷土史会)、『国史大辞典』(吉川弘文館)。『日本史大辞典』(河出書房新社)。『こもの文化財だより第20号』(菰野町教育委員会)。「日本書紀」『新日本古典文学全集3』(小島憲之、直木孝次郎)、『日本民族大辞典』吉川弘文館。『播磨国風土記』。 2003年5月15日掲載、2005年7月7日更新、2006年10月8日更新、2007年10月28日更新、2011年7月20日更新、2013年10月13日更新 |